第1話 Pered shtormom

【人間side】

今日で恋雪がレジスタンスに入って二ヶ月になるの!
戦いとか物資の確保とか、毎日大変なことも多いけれど、それでもレジスタンスのみんなといるのは楽しくて、あっという間の日々だったわ。
だから今日は、大好きなみんなのことを紹介していきたいな!


「えー! わかんないよー!」
「あっ、コラ、ツバメ! 座りなさい!」
「お菓子も持ってきたから、頑張るですよ!」
まず、朝起きて共用の大部屋を覗いてみたら、夏実ちゃんと澪莉ちゃんがツバメちゃんにお勉強を教えていたわ。朝から頑張っていて素敵♡

レジスタンスには恋雪と歳の近い女の子たちが何人かいるのだけど、みんな仲が良いの!
夏実ちゃんはすっごく頭が良くて、色々なことを知っているわ。きっとたくさん努力したのね! 今日のお勉強会も、主に夏実ちゃんが解き方を説明してるみたい。
ツバメちゃんはいつも元気で、みんなの気持ちを明るくしてくれる女の子。戦いのときに使う雷の魔法はとってもかっこいいのよ!
お休みの日でも勉強しているなんて、応援したくなっちゃうわ!
澪莉ちゃんはオシャレさん! 持ち物を自分でかわいくデコっていて、とってもセンスがいいの。
机の上に置いてあるお菓子も、彼女が持ってきたみたい。ハート型のクッキー、澪莉ちゃんらしくて可愛らしいわ!
三人とも本当に楽しそう。恋雪も今度混ぜてもらいたいな! レジスタンスに入る前は学校でお勉強をしていたから、少しくらいならお手伝いできるかもしれないもの!

その近くにいたのは大輝くんと奈々生ちゃん!
大輝くんは恋雪のお友達! 大人しいけれど、戦いになるととっても勇敢で頑張り屋さん。神様とか幽霊とか、恋雪の知らないオカルト的なことにとっても詳しくて、お話していて飽きないわ。
奈々生ちゃんとは、まだあんまり関わったことがないのだけれど、かわいくて魅力的って思ってるわ! ちょっと不思議なところがあるのも、ミステリアスな女の子って感じで素敵よね。
今は、大輝くんが奈々生ちゃんになんとか声をかけようと頑張っているみたい。
前に聞いたんだけど、大輝くんは奈々生ちゃんのことが好きなんだって。お友達が素敵な恋をしてるとなんとなく嬉しい気持ちになるわね。
だから今もつい、頑張れ!って思いながらこっそり見ていたの。
そしたら。
「相棒くん、うちに用事?」
奈々生ちゃんの方から大輝くんに声をかけてる!
やった!って思っちゃった! 大輝くんの想い、実るといいな~。
「え、ええと、奈々生さん!?」
大輝くん、大丈夫! チャンスよ!!

はやくみんながもっと安全に恋できる世界になってほしいなぁ…そのために恋雪も一生懸命戦わなくっちゃ!

大部屋を出たらびっくり!
東郷さんがつむぎちゃんを抱きしめていたの!
恋雪が立ち止まっていたら、東郷さんと目が合ったわ。
そしたら東郷さんは人差し指を自分の口に当てて「シーッ」て……。
もう素敵! 二人の恋の事情は仲良しのつむぎちゃんからたくさん聞いてきるから、見ているだけでドキドキしちゃった! これからもお幸せにね♡

つむぎちゃんは恋雪と二人で女子会をしたり恋バナをしたり、一緒にいるといつだって楽しいの!また今度、今日のこともたくさん聞かせてもらいたいわ!
時々一緒に甘い物を食べながら、東郷さんともつむぎちゃんのお話をするの。
つむぎちゃんのことを語っている東郷さんのお顔はすっごく優しくて、恋雪はそれを見るのが大好き! ついつい色んなことを質問しちゃう。
つむぎちゃんが好きな人と幸せそうで、恋雪もとっても幸せよ。


お昼!
レジスタンスのみんなが住んでいるこの廃ホテル、食堂はそのまま使っているの! とっても広いから隊員全員でご飯を食べることもできるのよ。
時々夜中に東郷さんがこっそり夜食を作っているのも見かけるわ。

厨房から音がするから、誰かいるのかな? と思っていたら、幸見くんが出てきたの。なにを作っていたのかしら?
幸見くんは恋雪がレジスタンスに入ったばかりの頃、たくさんお世話になった人! 面倒見が良くて、それからお料理が上手なの! 恋雪も夜ご飯のメニューをリクエストしたことがあるわ。

「幸見のオムライスは美味しいからね」
奥で座って待っていたのは安くんとユレンちゃん。
この三人、最初は少し意外な組み合わせだって思ったけれど、前に安くんとパンケーキやドーナツを持ち寄って、みんなのいいところを言い合ったことがあってね?
そのときの安くんを思い出すと、それもなんとなくわかるような気がしたの。
それに、ユレンちゃんって自分の信念が強いからあまり誰かと一緒にはいないイメージがあったのだけれど……幸見くんや安くんとはとっても仲がいいみたい。
「君はやっぱり料理の天才かもしれないな」
「そんなことないよ」
「この私が言うんだ、認めておけ」
……えっ! ユレンちゃんが笑ってる! 珍しい。
出てきたご飯、あんなにも美味しそうに食べるのね、素敵だわ!

……そのとき、遅れて厨房から出てきたのは桔梗さん!
今日も魔法でお料理のお手伝いをしていたのかも。桔梗さんは炎を操る魔法が使えて、よくお料理をするときにも呼ばれるんですって。
お皿を持ってるから……もしかして奥でなにか食べていたのかしら? 早く気が付けばよかったわ。それにしても、今日も素敵!

桔梗さんは強くて、優しくて、大人っぽくて、かっこよくて……恋雪の一番好きな人!
惚れっぽい恋雪だけど、桔梗さんに対しては誰よりも本気の恋なの。いつかこの人と一緒に、幸せになりたいわ。

「あっ桔梗! 今日もありがとう」
「いいを使うな、君は」
「二人とも、そりゃよかったよ」
桔梗さんは安くんやユレンちゃんと話していて、まだ恋雪の視線に気がついていない。
だから恋雪から声をかけよう。大丈夫そうなら、このあと二人でどこかに行きたいな。胸が高鳴った。愛する人の、名前を呼ぶの。
「ねえ、桔梗さん!」

こんなに素敵な人たちに囲まれて、恋雪は毎日楽しいわ!
これからも大好きなみんなと、ずーっと仲良く過ごせたらいいなあ。


■■■


【化け物side】

「今日はいい日でした」
ローザが嬉しそうに笑っている。
「なにか美しいものでも見つけてきたのかい?」
炎華は彼が美しいものとそうでないものとに向ける態度の違いを、とても気に入っていた。
彼の認める美しいもの。彼を満足させるもの。
自分と彼は、ほんの少しだけ、方向性に限って言うのであれば……似ているかもしれない、と感じることはこれまで度々あった。
「見てください、こんなに。」
彼の骨ばった白い手で取り出されたのはいくつもの小瓶。高さ十センチに満たない硝子の容器の内側に、それぞれの『宝物』が光っている。
毒々しく生命の輝きを放つ、美しいものたち。
ローザがあまりにも楽しそうで、それなら結構なことだと炎華は思った。


今日も虎狼にたくさんの知らないことを教えてもらった。
二人で遊んだあと、少し疲れたので近くの壁にもたれかかっていると、次第にゆっくりと微睡み始める。
いつも虎狼が話してくれる日本の文化。見たことのない世界。どれも私には新鮮で、ついつい聞き入ってしまう。
そのうちに、次はどんなことを教えてくれるのだろうと、彼に会うことが楽しみになっていた。
以前、レジスタンスの男と戦闘したとき、長かった自慢の髪を乱暴に切られたことがある。
せっかく手に入れた美しさだったのに。自分が完璧に近づけていた要素だったのに。ざんばらになった頭を見るたびに悔しさと怒りが込み上げていた、そんなとき。綺麗に髪を切り揃えてくれたのも彼だった。
心から信頼している大切な友達。
目が覚めたら、また一緒に遊びたいな。
そんなことを考えながら、私は目を閉じた。


出会った日の衝撃は今でも忘れられない。
こんなにも端麗な化け物が存在することを、僕はあの日まで知らなかった。まるで神が作り上げた至高の芸術品のような、一部の隙もなく完成されたその姿……。
「今日も本当にお美しいですね、フランさん。」
そう挨拶代わりに声をかけると、当たり前でしょう、と笑われた。
「この姿は私の最高傑作なのだから。」
こちらに応える声。唇の動き。表情。視線。そのすべてが狂おしいほどに『美しい』ものであった。
何かに囚われ続けるように、鮮明に焼き付いたあの記憶。夢か現か、この感情の終着点は。
今はまだ、なにもわからない。
ただ今日も彼女を「愛したい」という……それだけが、僕を僕たらしめていた。


「洒落た服だね、和装っていうのはみんなそんな感じなのかい?」
「アンタのその角はどうなってんだ…?」
炎華は私の外見に興味を持っているらしい。服装や角について訊ねられることが多い。そのことは素直に嬉しく、つい他愛もない話までしてしまう。
私が昔から蓄えてきた知識、見てきたものの話。そういったことも、炎華は楽しそうに聞いてくれた。
彼女はとても頼もしい化け物だ。姉御肌で他者を引っ張っていく力があり、さっぱりとした性格で面倒見がいい。一見すると人間味が強い印象を受けるが、戦闘となると人間への容赦が全くないところも信用できる。
彼女の方も、私が頼りにしていると言ったときには満足そうな顔をしていた。
次に会ったときは、どんな話をしようか。


虎狼が廃墟から見つけてきたものは、所々に傷がついたカメラだった。
「ちょっと貸して」
フランはこういった形のカメラに見覚えがあった。虎狼から受け取り、カバーを開いて電源ボタンを押す。
液晶が光り、機械的な音が小さく鳴った。まだ電池は残っているらしい。

「せっかくなのでみなさんで撮りましょう」
「たしか、タイマー機能を使えば全員で撮れるわ。高いところにカメラを置いて」
ローザとフランが提案する。
「このくらいの高さなら大丈夫かい?」
錆びついた、やや背の高い鉄製の机。二人の言葉を受け、炎華がその上にカメラを置いた。
「タイマーのボタンは……っと」

カシャ

「あれ?」
薄暗い廃ビルに、突然弾けたシャッターの音。間違えてセットする前に撮ってしまったらしい。おそらく、炎華の顔だけが写っている。
「あっははは!難しいねえ!」
「姉貴さん、僕がやりましょう」
豪快に笑う炎華の代わりに、今度はローザがボタンを操作しタイマーを設定。
「みなさん、後ろに下がってください。」
彼の言葉を合図に、四人の化け物たちはカメラから少し離れ、思い思いにポーズをとった。

…………。
……………………。
…………………………。

「あれ?」
「さっきの音は鳴らないのだろうか」
「おかしいですね……」
いつまでもシャッター音はしない。
「ちょっと待って」
フランが前に出てカメラを確認すると、ビデオモードになっていた。今しがた撮れたばかりのデータを見る。化け物たちが動画の中で静止したままキメ顔をしている様は、あまりにもおかしかった。
フランは笑いを堪えながら、もう一度セットし直した。
今度こそ、大丈夫なはず。
ボタンを押して、すぐに離れる。みんなで押し合うようにくっついて、ピースサイン。

カシャッ!
気持ちがいいほどしっかりと、シャッター音が廃墟に響いた。

大切な仲間たちと撮った写真。それは幸せの象徴のよう。
「私の肌がもっと綺麗になったら、また撮りましょう。」
フランは三人に言った。誰も反対はしなかった。
このカメラは、その日からずっと持っている。
私が美しくなるたびに、みんなと撮っていきたいから。

Slava chto

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